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みずほ銀らが検証「Hyperledger」は取引システムに使えるか?(4/4 ページ)

» 2017年04月25日 10時00分 公開
[星暁雄キーマンズネット]
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富士通とみずほ銀による「証券ポストトレード」の技術検証

 富士通/富士通北陸システムズ 滝口成人氏は、富士通とみずほ銀行が共同で開発した「証券ポストトレード」への技術検証について説明した。国際的な証券取引の分野では、「約定したものの、伝言ゲームの内容が食い違い無効になる取引」が一定比率存在するが、ブロックチェーンで約定内容を共有することで失敗を低減しようという取り組みである。

 この取り組みは、まずビットコインのパブリックブロックチェーンを活用する「OpenAsset」プロトコルによりいったん実装した。その後、内容が公開されるパブリックブロックチェーンではなく、当事者の会社だけが参加できるコンソーシアム型ブロックチェーンに移行することにし、Hyperledger Fabricを使って再度実装している。

 今回のイベントで、滝口氏は双方の特性が分かるデモを披露した。Fabricの場合、ビットコインのブロックチェーンとOpenAssetの組み合わせに比べ、「ワールドステート」と呼ぶ一種のデータベースをデータ管理に利用できること、Chaincodeを汎用(はんよう)プログラミング言語で開発できることから「より簡単に開発できた」としている。なお、「証券ポストトレード」に関する発表内容の中核部分は、日本銀行が開催した第3回FinTechフォーラム資料としても公開されている。

 発表では、開発経験を踏まえて「Chaincodeの品質担保が極めて重要」と指摘した。特に、合意形成のため「時刻や乱数のようにノードごとに異なる情報を利用せず、各ノードの実行結果が必ず同じになるようにする(決定論的なプログラムコードを書く)」ことが大事だと指摘した。

 前述したようにブロックチェーンは信頼できる台帳である点に価値があるのだが、スマートコントラクト(Chaincode)にバグや脆弱(ぜいじゃく)性があればこの特性は台無しになってしまう。また、Chaincodeの実行結果がノードごとに異なる場合、正常に動作しない。例えば参照する時計の時刻がノードごとに異なっていたり、プログラム内で乱数を使うと、同じプログラムコードでも実行結果が異なる現象が起こり得る。Fabricをシステム構築に活用する場合はChaincodeのプログラム開発が必ず伴うと考えてよいので「Chaincodeの品質担保が重要」との指摘は重い意味を持つといえる。

Fabricとは異なる分散型台帳技術「Iroha」

 今回のイベントではFabric関連の発表が多い中で、Fabricとは別の分散型台帳技術Irohaについて、開発元であるソラミツの武宮誠氏が紹介した。

 FabricはB2B向けだが、IrohaはB2Cを意識し、特にモバイルアプリ開発ライブラリを充実させている。データ構造にはブロックチェーンで用いられるハッシュチェーンではなく「マークル木」を用いる(つまりIrohaは厳密にはブロックチェーン技術ではないが、分散型台帳技術ではある)。

 「スメラギ」と呼ぶPBFTを拡張した確定的な合意形成アルゴリズム、高速な動作(秒間3000トランザクションを目指すとしている)、「天地(あめつち)」と呼ぶビッグデータ対応可能なデータベースなど、Fabricとは異なる特徴を備える。イベント内仮想通貨「萌貨」に使われた実績がある他、IoT(Internet of Things)向けの応用などが検討されている。IoT(Internet of Things)向けの応用などが検討されている。このMeetupの後、カンボジア国立銀行とIrohaおよび次世代決済システムの共同開発に乗り出すとの発表もあった。

 以上、Hyperledger Meetupの内容を駆け足で紹介した。ブロックチェーン/分散型台帳技術に関する取り組みは各方面で進んでおり、大手ITベンダーやメガバンクも積極的だ。Hyperledger Fabricの新バージョンv1.0は大幅にアーキテクチャが強化されるし、Irohaも説明を聞く限り非常に意欲的な内容だ。このような取り組みによりブロックチェーン/分散型台帳技術への知見の蓄積、知識やノウハウの普及が進み、次の世代の情報システムに結びついていくことを期待したい。

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