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データセンター最新ファシリティ事情IT導入完全ガイド(2/6 ページ)

» 2017年05月08日 10時00分 公開
[酒井洋和てんとまる社]

日本におけるデータセンターの位置付け

 場所、スペース貸しやコンピューティングリソースの提供を行うデータセンターは、これまでファシリティ重視の傾向で建設されてきた。特に米国と違い、日本のデータセンターはファシリティやアクセスのしやすさなどなどの立地条件、ラック当たりのコストなどが大きな差別化になっており、それは現在も大きくは変わっていない。しかし、最近では新たな動きも出始めており、ファシリティ偏重からの脱却を目指す事業者も登場している。

 そもそも米国のデータセンターは、どんなサービスを提供するのかというサービスモデルを起点に、そのサービスに適したラックの配置やケーブリング、空調設備などを設計していくのが一般的。ビジネスを行うためのプラットフォームという位置付けでデータセンターが設計され、運営する事業者にはデータセンターにおける責任者である「データセンターマネジャー」が存在しているほど。データセンターマネジャーは、設備はもちろん、日々の運用管理に至る全てのことに責任を持っており、効率的にサービス提供するための施設づくりを行っている。

 対して日本の場合は、建物を見るファシリティ担当者と内部のコンピューティングリソースを設計する担当者が異なっており、ある意味ファシリティ側とITとの見えない壁が存在しているケースが多い。組織的に縦割りとなっていることからも、部分最適化が図られているともいえる。ビジネス基盤として全体最適を目指す米国のスタイルとは異なっている部分も少なくない。

 もちろん、サービスを意識した形で設計を行うことで差別化を図ろうとする事業者もおり、主には自治体向けや学術情報ネットワーク「SINET」へのアクセスを可能にする大学・研究機関向け、クレジット業界におけるセキュリティ基準であるPCI DSS準拠のソリューションを提供する金融業界向けなど、業界特化のサービスを提供する事業者もいれば、Webサーバを設置するための場所としてだけでなく、そのWebサイトの集客や分析業務へのサービスをデータセンター事業者として請け負うなど、単なる場所貸し以外のニーズに応えることを意識したサービスモデルを提供する事業者も出てきている。単なるファシリティだけでは差別化が難しいこともあり、今後はサービスモデルを意識した事業者が台頭してくるはずだ。

 なお、使い方を意識したサービスとしては、例えばディープラーニングに適したNVIDIA製のGPU搭載の環境を用意する事業者や、SAP HANAなどを動かしたりといった特定アプリケーションに最適化されたコンピューティングリソースを提供することで差別化を図る事業者もある。

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