外部データセンターサービスを利用する目的の大きな部分では、やはりコスト削減が最も期待されているところだ。自社のサーバルームで運用すれば、当然人件費も必要なだけでなく、資産としてハードウェアを持つ必要があり、各種ファシリティの維持管理にも多くのコストや工数を割く必要がある。外部のデータセンターサービスを利用すれば、コロケーションは別にして、ホスティングやIaaSなどでは自前でのハードウェア管理が不要となるため、必要なリソースを柔軟に使い分けることが可能になる。
また、中小企業を中心にセキュリティ対策としてデータセンターを利用する企業も増えている。セキュリティに関しては、自社での意識が高まってきただけでなく、取引先からの要求でセキュリティ強化を図っている中小企業も少なくないだろう。自前でIT専門要員の確保が難しい中小企業であれば、セキュリティ対策は外部のプロにお願いしようと考えるのも当然だ。
逆に外部データセンターを利用しない理由については、大企業では圧倒的に「セキュリティを上の不安」を挙げるところが多く、中小・中堅企業では「社内組織の考え方や体制の都合」をその理由を挙げているケースが多いことが分かった。特に大企業が持つセキュリティ上の不安は、何か具体的な課題を持っているというよりも、漠然とした不安感がいまだに払拭(ふっしょく)できていない印象がある。なお大企業の場合は、情報システム子会社にインフラをアウトソースするケースや、自前でデータセンターを構えて運用するということも可能であり、外部のデータセンターというよりも閉じた環境で自前のインフラを運営しているケースも少なくない。これは、セキュリティ対策上という理由だけでなく、グループ内のITに関連した人材を生かしていくという意味合いも含まれている可能性はある。
セキュリティを理由に導入する中小企業が多いのに対して、セキュリティを理由に導入しない大企業が多いというのは、結果として興味深いところだろう。
また、コストの面で外部のデータセンターサービスを利用するよりもオンプレミスなどの環境で運用した方が安価だいう声も多く聞かれる。確かに全てがクラウドをはじめとした外部に移行できるわけでもなく、一部残さざるを得ないオンプレミスと併用していく形になると、運用自体が複雑になりがちで人の削減もかえって難しくなる。結果として安くならないという試算をするところもあるだろう。
ハードウェア資産を自前で持つ環境になると、その資産に関連して支払うコストも増えてくるだけでなく、買い替えによるイニシャルコストもどこかで上積みされてくる。コストについては、5年ほどのスパンで見たうえで、運用保守の費用や買い替え時の費用も踏まえて判断する必要があるだろう。
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