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帳票類のデジタル化の状況(2020年)/前編

ハンコ文化はどこまでわれわれを苦しめるのだろうか。デジタル化できていない帳票の領域を見てみると、自社だけでは動けない日本企業のジレンマが見えてきた。

» 2020年04月16日 08時00分 公開
[キーマンズネット]

 キーマンズネットは2020年4月6〜10日 にわたり「帳票の利用状況に関するアンケート」を実施した。全回答者数120人のうち、情報システム部門が34.2%、製造・生産部門が17.5%、営業/企画・販売/促進部門が10.0%、経営者・経営企画部門が6.7%などと続く内訳であった。

 前編の今回は、企業で作成・利用される帳票の「管理方法」や、紙での運用を採用している企業の「理由」「苦労している点」など、企業における帳票の利用状況を把握するための質問を展開。96.2%と大多数が部分的にでも帳票をデータ管理しているなど、全体的に紙からデータに帳票管理が移行されつつあることなどが明らかになった。一方で、紙が残る領域にも明確な傾向が見える結果となった。なお、グラフ内で使用している合計値と合計欄の値が丸め誤差により一致しない場合があるので、事前にご了承いただきたい。

紙からの移行進む帳票管理、96.2%がデータ化に着手

 初めに業務で作成・利用される帳票の形式を聞いたところ「部分的にデータ化しているが、紙に出力して管理している」33.8%、「部分的にデータ化しており、紙はスキャンするなどでデータ化して管理している」50.0%、「全てデータ化しており、データのまま管理している」12.5%、「全て紙で運用し、紙で管理している」3.8%と続き、まとめると全体の96.2%が部分的にでも帳票のデータ化に着手していることが分かった(図1)。

 そこでこの結果を2019年5月に実施した同様の調査と比較したところ「紙で管理する」割合が48.5%から37.6%と10.9ポイント減少しており、ここ1年でデータ管理が進んできている傾向が見られた。内訳を見ると「部分的にデータ化している」割合が83.8%と2019年より3.3ポイント減少している代わりに「全てデータ化して管理している」割合が2.6ポイント増加していた。このことから紙管理からデータ管理への移行に加えて、部分的なデータ管理から完全データ管理へ移行する企業も増加傾向にあることが分かる。

図2 帳票の管理方法 帳票の管理方法

読者に聞いた“ハンコ必須”な紙の帳票が残る領域、カギは取引先にあり

 一方、減少傾向にはあるものの帳票を「紙で管理する」割合も全体の4割近くと相当数存在する。そこで背景を調査すべく、“紙で管理している帳票の種類”を聞いた。その結果は、予想に違わず、昨今話題に上ることが多い「テレワークができない業務」が多数となった。以降で詳細を見ていく。

 「契約書などの法務案件に関わる書類」80.0%、「会計・経理に関わる帳簿類」73.3%、「受注・発注・納品などの商取引に関わる書類」「社内承認プロセスの証左に関わる書類」が同率で66.7%と続いた(図2)。受発注などの商取引や契約書の取り交わしなど、社外取引業務を中心に紙運用になりやすい傾向にあるようだ。

 次に「紙で帳票を管理する」とした回答者にその理由について聞いた。

 その結果は、「承認印の記録が必要なため」56.7%、「法律により、紙での保存を義務付けられている帳票があるため」43.3%などが上位に挙がり、このことからも契約書や取引書類など押印や保存を義務付けられている帳票を中心に紙運用が続いていると見ることができそうだ(図3)。

紙で管理している帳票 紙で管理している帳票

 法的に押印と同等とされる電子署名などの仕組みや契約管理システムもあり、電子化が可能な業務は増える状況にあるが、まだ紙の書類を必須とする取引は多い。自社内のデジタル化やペーパーレス化は実現しても、契約など自社以外との取引では相手側の環境が整わない場合には、いつまでも「紙」が残ることもある。今回の調査では、そうした領域の業務で多く「紙」が残る状況がうかがえる内容となった。

保管場所の確保に検索性の悪さ、リモートワークができない、“紙運用”のリスクがあらわに

 帳票のデータ化が進む背景には、紙運用で問題が生じるシーンが増えていることなどが挙げられよう。そこで帳票を紙で管理している方を対象に運用面での苦労や不満などの有無をフリーコメントで聞いた。その結果、一番多かった不満は「ファイルが増えていくのに置き場所は増えない」「過去分の管理が難しい」といった増え続ける紙文書の保管場所の確保や、保管期限切れ書類の廃棄について管理が難しいといった声だった。関連して「倉庫行き文書の検索」「現行/過去資料の検索」など保管文書へのアクセス性についても聞かれ、保管場所という物理的な問題と検索・アクセス性という非生産的な問題の2つについて苦労している企業が多いようだ。

 次に多かったのは「押印のために出社するため、テレワークができない」「管理者間でのやりとりが非効率。リモートワーク対応が困難」といった紙文書への押印や承認が必要であることから、出社前提の業務フローになっていてリモートワークができないという声であった。

 昨今見られる伝染病流行時や災害発生時といった有事の際、安全性や業務継続の観点からリモートワークを推進する企業は多い。緊急事態宣言を受けた都道府県が在宅勤務を要請するなど、リモートワーク体制の構築を喫緊の課題とする企業が増える中、押印による承認という日本的な“ハンコ文化”が思わぬ足かせとなっている企業も少なくないようだ。

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