2020年はオフィスツールの代表格とも言える「Office 365」と「G Suite」がそれぞれ名称を変え、刷新された。G Suiteは「Google Workspace」という名になり、プラン体系も大きく変わったが、機能やライセンス料金など、従来とどこがどう変わったのか。一覧表を基に整理して見ていく。
2020年10月、「G Suite」の名称で提供されてきたGoogleのグループウェア製品がリブランドされ、「Google Workspace」という名称に変わった。ライセンスプランの選択肢も3種類から6種類となり、価格や含まれる機能も改定された。
本稿では、6つのライセンスプランの違いや、機能や料金プランにおける旧G Suiteとの変更点、旧G SuiteユーザーがGoogle Workspaceに移行するに当たって注意が必要なポイントなどを整理して、解説する。
まずは、契約面に関わる項目から見ていこう。旧サービスであるG Suiteの新規契約は2021年3月いっぱいをもって終了となり、同年4月からはGoogle Workspaceのプランに従って契約を締結する必要がある。これまでG Suiteを利用してきたユーザーは、2021年3月までに契約更新を済ませれば、従来と同じプランで引き続き契約が可能だったが、2021年4月以降に更新を迎える場合は、新たなプランで契約をし直す必要がある。
ライセンスプランの内容はどう変わったのだろうか。旧G Suiteのライセンス体系はシンプルで、エントリー用途向けの「Basic」、一般ビジネス用の「Business」、そして大規模ユーザー向けの「Enterprise」の3つのプランのみだった。
これがGoogle Workspaceになると、まず中堅・中小企業向けの「Workspace Business」と、大企業向けの「Workspace Enterprise」の2つに分かれる。そしてそれぞれのプランにおいて、さらに細かく用途やニーズに応じて3つのメニューが用意されている。つまり、全部で6つのライセンスメニューが存在する。
Workspace Businessには「Starter」「Standard」「Plus」が、そしてWorkspace Enterpriseには「Essentials」「Standard」「Plus」がある。これら各プランに含まれる機能を、旧G Suiteのメニューと比較する形でまとめたのが以下の一覧表だ。
まず目に付くのが、Web会議ツールの「Google Meet」の機能が、ほぼ全てのメニューで強化されている点だ。旧G Suiteでは、Google Meetの録画機能は最上位のEnterpriseプランでのみ提供されていたが、Google Workspaceではほぼ全てのプランで利用できるようになった。これは、コロナ禍に伴うテレワーク需要への対応強化を図ったものであり、この分野で先行する「Zoom」や「Microsoft Teams」の存在を意識した動きだと言える。
もともとGoogle Meetは、Web会議を行いながら「ドキュメント」や「スプレッドシート」などのオフィスツールの共同編集ができたり、Google Meetの会議用URLを発行すればGoogleカレンダーに自動でリンクが追加されたり、録画データを直接「Google ドライブ」に保存できたりと、グループウェア機能との連携に長けていた。
これに加えて、今回のリブランドでWeb会議そのものの機能を強化することで、ニューノーマルの時代に適した、多様な働き方をサポートするグループウェアとしてより存在感を高めたいとの狙いがあると思われる。
では、細分化されたライセンスプランをどのような指針をもって選べばいいのだろうか。6つのプランの違いを見ながら、旧プランとの機能差や料金の改定内容も含め、注意ポイントを整理していく。
まず旧G SuiteでBasicプランを利用していたユーザーは、Workspace BusinessファミリーのStarterプランが後継に当たるため、これを選べば今までと同じ料金でほぼ同等の機能が使える。ただし最大ユーザー数が300人を超える場合はその限りではないため、注意が必要だ。この点については後半で詳しく解説する。
旧Businessプランを利用していたユーザーは、Workspace BusinessファミリーのStandardもしくはPlusメニューが後継プランに当たる。価格面だけに着目するとStandardが同等のプランになるが、アーカイブ機能を提供する「Google Vault」が提供されなくなるため、Google Vaultの利用が必須の場合はPlusか、もしくはより上位のWorkspace Enterpriseファミリーへの乗り換えを検討する必要がある。
なおPlusは、MDM(モバイルデバイス管理)やDLP(情報漏えい対策)といったセキュリティ機能がStandardよりも充実しているため、テレワークのセキュリティ対策を強化したい場合は、Plusが適していると言えるだろう。
ちなみに、旧Businessと新Standard/Plusの最大の違いの一つに、データ容量に上限が加えられた点がある。旧Businessではユーザーが利用できるデータ容量に上限はなかったが、Standardになるとユーザー1人当たりの上限が2TB、Plusでは5TBになる。ただしこの容量は、契約の範囲内であれば複数ユーザー間で共用できる。例えばStandardをユーザー数100人で契約した場合、100人の使用容量の合計が「2TB×100=200TB」を超えなければ問題ない。誰か1人が100TBを占有していたとしても、残り99人の使用容量の合計が100TBを超えなければいいわけだ。
よほど大きなデータを保存するニーズがなければ、今回新たに設けられた上限は気にしなくてもよさそうだ。逆に言えば、日頃から大容量のデータを扱っている場合は、十分な注意が必要だ。
一方、Workspace EnterpriseファミリーのStandardメニューおよびPlusメニューにおいても、利用できるデータ容量に1人当たり5TBの上限が設けられているが、こちらも同様に契約の範囲内で共用が可能な上、Googleに申請すれば無料で実質「容量無制限」に拡張できる。これまで旧G SuiteのBusinessもしくはEnterpriseを利用していて、かつデータ容量無制限が必須要件となる場合は、Workspace EnterpriseファミリーのStandardプランもしくはPlusプランが適しているだろう。
なお、旧G SuiteでEnterpriseプランを利用していたユーザーは、この2つのプランのうちどちらかを選べばほぼ同じ機能を利用し続けることができる。Standardの方を選べばライセンスコストは若干安価になるが、その上位のPlusを選んでも大幅なコスト増にはならない上に、セキュリティ機能が強化されているので、テレワーク環境におけるセキュリティ機能を重視する企業にとっては検討する価値はあるだろう。
一方、今回新設された「Essentials」というプランは、メールやカレンダーといった本来Google Workspaceの中核を担うコミュニケーション、コラボレーション機能が省かれており、Web会議やチャット、ドキュメント共有といった機能にほぼ特化したメニュー構成となっている。このプランは、コロナ禍以降のテレワーク需要を見込んだものであり、「既に他のグループウェア製品を導入済だが、テレワーク環境強化のためにWeb会議やチャットの機能だけを新たに導入したい」というニーズを対象にしたプランだ。
このように、今回のリブランドによって今後の多様な働き方を見据えた新機軸を打ち出してきたGoogle Workspaceだが、場合によっては旧G Suiteと比べ、ライセンスコストが大きく変動する可能性もある。特に「旧G SuiteでBasicプランもしくはBusinessプランを利用しており、かつユーザー数が300人を超えていた場合」は注意が必要だ。
旧G Suiteではどちらのプランも最大ユーザー数の制限はなかったが、Google Workspaceの後継プランに当たるWorkspace Businessファミリーのプランは、どれも最大ユーザー数が「300人まで」となっている。一方、上位のWorkspace Enterpriseファミリーでは、どのプランもユーザー数に制限は設けられていない。ユーザー数が300人を超える場合は、上位プランへの乗り換えを余儀なくされる可能性がある。
当然、その分ライセンスコストも高くなるため、上記のケースに当てはまる場合は早めにコストのシミュレーションをし、上位プランへの乗り換えで発生するメリット・デメリットを検討する必要があるだろう。その上で、ライセンス購入先のベンダーや代理店とも相談し、どのようなプランが自社にとって最適なのかをあらためて見直したい。
「安価なプランでデータ容量を無制限に利用できる」という点にメリットを感じていた企業も、Google Workspaceへの移行後は上位プランへ乗り換えざるを得なくなる可能性もある。普段の業務で大容量データを扱うことが多い場合は、まずは現在のデータ容量の利用状況をきちんと把握した上で、次に契約すべき最適なプランを慎重に検討するといいだろう。
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