さまざまなビジネスにAIが投入される中、採用活動への影響はどうか。Thinkingsによると、AIの登場によって採用環境は「過渡期」を迎えている。同社が実施した調査から判明したAI投入の成果を見てみよう。
Thinkingsは2024年3月28日、「2023年度の採用活動におけるAI(人工知能)活用」に関する調査結果を発表した。同社はAIの登場によって採用環境は過渡期を迎えていると見ており、AI活用が広がる2025年卒の採用活動を「採用3.0」としている。今回の調査は、過渡期におけるAIツールの活用状況と、採用成果に与える影響を明らかにするために実施された。
同調査は、2024年4月に企業の人事・採用担当者を対象に実施したオンラインアンケートで、200人から有効回答を得た。なお、同社は「2023年度の採用活動」を2024年4月入社の新卒採用と、2023年度中の中途採用と定義している。
同調査によると、2023年度の採用活動においてOpenAIの「ChatGPT」などのAIツールの活用状況について、「活用した」と回答したのは43.0%、「活用していない」と回答したのは53.5%だった。
AIツールを「活用した」と回答した人にどの領域でAIツールを活用したかを尋ねたところ、「求人票の制作」が60.5%で最も多く、「スカウト」「WEB面接」がともに31.4%で2位に挙がった。
AIツールを「活用した」と回答した人と「活用していない」と回答した人に採用目標数の達成状況を尋ねると、「活用した」グループのうち81.4%が目標を「達成した」と回答した。一方、「活用していない」グループで「達成した」と回答した人は47.7%にとどまり、33.7%の差があった。
また、目標数を「達成していない」と回答したのは、「活用した」グループが18.6%、「活用していない」グループが44.9%と、こちらも差が出る結果となった。
これらの結果を受けて、Thinkingsは「AIツールの活用が採用目標数の達成に寄与している」と分析した。
採用した「人材の質」(能力面)の観点からも、AIツールを「活用した」人のうち74.4%が目標を「達成した」と回答した。「活用していない」グループで「達成した」と回答した人は46.7%にとどまり、人材の質の向上にもAIツールの活用が寄与している傾向がうかがえる。
2023年度の採用活動における人事・採用担当者の人員リソースの充足状況については、AIツールを「活用した」と回答した人の73.3%が「足りていた」「まあまあ足りていた」と回答した。一方、「活用していない」グループにおける「足りていた」「まあまあ足りていた」との回答は49.5%にとどまった。
今回の調査結果を受けて、Thinkingsの佐藤邦彦CHRO(Chief Human Resource Officer)は「AIツールを活用している企業は目標採用数や採用の質に対する満足度が高く、人事のリソースについても比較的充足している傾向がある。AIツールの導入によって効率化されたリソースを手が付けられていない課題対応や中長期的な戦略立案業務などにアサインすることで、採用チーム全体のパフォーマンスが向上していると考えられる」と分析する。
「AIツールは今後もさらなる進化が予想され、採用活動の質の向上に大きく貢献するだろう。しかし、単にAIツールを使うのではなく、定量的かつ定性的な目標を設定し、その実現に向けて適したAIツールを戦略的に取り入れることが、採用3.0時代における成果を出す鍵になりそうだ」(佐藤氏)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
製品カタログや技術資料、導入事例など、IT導入の課題解決に役立つ資料を簡単に入手できます。