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M365がまた変わるの? 「Teamsのセット売り廃止」だけでは止まれない理由

Microsoftは、TeamsをSaaS型のオフィススイートから切り離したが、欧州委員会はこの対応のみでは市場における健全な競争を回復させるには不十分だと判断した。

» 2024年08月14日 08時00分 公開
[Matt AshareCIO Dive]
CIO Dive

 Microsoftは2024年4月に「Microsoft 365」「Office 365」から「Microsoft Teams」(以下、Teams)を分離し、単独製品として提供すると発表した。この背景には、欧州委員会がMicrosoftに対し、TeamsをMicrosoft 365やOffice 365にバンドルして提供することによって、市場の競争を不当に制限する可能性があると提起したことがある。

 しかし、Microsoftはこの「Teams分離」の次の選択肢を検討しているという。その理由とMicrosoftの動向を紹介する。

M365がまた変わるの? 「Teamsのセット売り廃止」だけでは止まれない理由

 2024年6月25日(現地時間)に発表された報告書によると(注1)、欧州委員会は「Microsoftによる、Office 365および「Microsoft 365」と「Microsoft Teams」(以下、Teams)のバンドルは、EU(欧州連合)の競争法に違反している」と指摘した。

 EUのマグレーテ・ヴェスタガー氏(競争政策を担当するエグゼクティブ・バイスプレジデント)は、声明の中で次のように述べた。

 「Microsoftが、自社のコミュニケーション製品であるTeamsを、ビジネス向けのオフィススイートに結び付けることで、競合他社との関係で不当な優位性を得ているのではないかと懸念を抱いている。これが確認された場合、Microsoftの行為は競争法に違反することになる」

 欧州委員会は、2020年にSlack Technologies(現在はSalesforceのグループ企業)が提起した訴えに応じて(注2)、2023年の夏にMicrosoftのソフトウェアライセンスに関する継続的な調査を開始した。ヴェスタガー氏は「Microsoftは、欧州委員会の懸念に対応する機会を有している」と述べた。

 Microsoftは、EUの調査開始に対応して、2023年の10月にまず欧州でTeamsをMicrosoft 365から切り離した(注3)。2024年の4月には、欧州での変更を全世界に拡大した。欧州委員会は、これらの緩和策に一定の評価を与えたものの「オフィススイートからの分離のみでは、同社製品をコンプライアンスに適合させることはできなかった」と述べた。

 報告書では「欧州委員会は、このような変更のみでは懸念を払拭するには不十分であり、競争を回復させるためにはMicrosoftにさらなる変更が必要であると暫定的な判断を下した」と指摘されている。特に、欧州委員会は、SaaS型のアプリケーションを購入する際に、『Teamsへのアクセス権を取得するかどうか』の選択肢を顧客に与えておらず、Teamsに配布上の優位性を与えているのではないかと懸念している。

 新規顧客は、Microsoft 365とは別にTeamsを購入しなければならないが、既存のTeams のバンドルを利用していた企業は割引パッケージを維持できる。

 コンサルティングサービスを提供するInfo-Tech Research Groupのスコット・ビクリー氏(アドバイザリープラクティスリード)は、次のように述べた。

 「あなたは既存のものを使い続けるか、新しく購入するかを選ばなければならない。別途購入しなければならない場合、それはバンドルよりも費用がかかる」

 また、競合他社は、Microsoftは企業向けソフトウェア市場における支配的な地位を利用して、現在、世界のパブリッククラウド市場の4分の1を占める「Microsoft Azure」でクラウド帝国を拡大していると非難した(注4)(注5)。

 欧州のクラウドインフラストラクチャサービスプロバイダー連合は、AWS(Amazon Web Services)を含む数十の小規模プロバイダーとともに、2023年11月にMicrosoftに対して「差別的なバンドル」と「技術的かつ経済的なロックイン」を促進する慣行を非難する苦情を提出した(注6)。

 Google Cloudは、1年前に米国連邦取引委員会(FTC)に苦情を提出し、クラウド市場におけるMicrosoftの反競争的なビジネス慣行を非難した(注7)。FTCは2023年3月にクラウド市場の調査を開始し(注8)、調査は現在も継続中だ。

 欧州委員会の調査に正式な期限はない。欧州委員会によると、EUの競争法違反事件の審理期間は、事件の複雑さと調査対象者の協力の度合いによって異なるという。Microsoftには、反論書を提出し、口頭での聴聞を要求する機会が与えられている。

 Microsoftは選択肢を検討している。

 Microsoftのブラッド・スミス氏(バイスチェア兼プレジデント)は、電子メールによる声明の中で次のように述べた。

 「Teamsを分離し、初期の相互運用性の取り組みを行った結果、さらに明確な見解が示されたことに感謝している。委員会の残る懸念に対処するための解決策を見つけられるように努める」

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