シングルサインオン(SSO)とは、一度の認証手続きによって複数のシステムやサービスへのログインを可能にする仕組みを指す。1つのIDとパスワードで複数のシステムを利用可能になるなど、IT部門のID管理の手間を軽減すると同時に、ユーザーの利便性向上にも寄与する技術だ(続きはページの末尾へ)。
SSOの仕組みが普及する以前は、IT部門は業務システムやアプリケーションごとにアカウントを発行していた。「123456」「password」など容易に推測できるパスワードはなりすましによる不正ログインの温床にもなり得るため、複雑なパスワードを発行することが望ましい。だが、1人の従業員が利用するシステムは多岐にわたる。発行されたパスワードを覚えきれず、中にはパスワードを記した付箋(ふせん)をPCに張り付けるユーザーもいる。
こうしたID運用とセキュリティ面の課題を解決する手段として、オンプレミス型のSSOソリューションが登場した。だが、認証基盤の構築には相応のコストと工数を要することから、導入できる企業は限られていた。そして、ここ10年あまりでクラウドサービスの広がりに伴って、状況は大きく変わった。
オンプレミス型のSSOシステムに代わって、複数のクラウドサービスと連携してシングルサインオンを実現する「Identity as a Service」(IDaaS)が登場した。サービス自体がクラウドベースで提供され、より容易かつ低コストで使えるようになった。
IDaaSの特長は、SAML(Security Assertion Markup Language)認証に対応していることだ。パスワードの入力代行や、Cookieに基づく仕組みとも異なる。IDaaSはユーザー認証の結果に基づいて「アサーション」と呼ばれる情報を生成してサービス側に渡す。サービス側はアサーションに含まれる認証情報と属性情報、アクセス権限情報などに基づいて適切な認可、アクセス制御を実現する。マスターIDでIDaaSにログインすることでサービスごとのログインの手間が減るなど、IT部門のみならずユーザー部門にとっても大きなメリットがある。
IDaaSなどSSOソリューションの導入に際して、「Microsoft 365」や「Google Workspace」などのグローバルサービスに加えて、国内のクラウドサービスへの対応もポイントになるだろう。
上述のセキュリティ確保と合わせて、ユーザーの利便性向上もSSOを導入する目的の一つだ。そのため、本当に認証方式を一元化できるのか、自社で既に利用しているアプリケーションやシステムに適したSSOを選択することが重要だ。SSOの対象範囲を明確にし、それぞれの認証方式に対応できるかを見極める必要がある。
ユーザーの利便性を考慮する上で重要なのが多要素認証の方式だ。「Windows Hello」などの生体認証やデバイス認証、ワンタイムパスワード認証など、自社の環境に適した多要素認証方式を選択することが重要だ。ユーザーの利便性を損なわない範囲で、セキュリティを強化できるSSOシステムを選ぶ必要がある。
企業のIT環境は常に変化している。新しいアプリケーションやシステムの導入、クラウドサービスの利用拡大など、将来的な拡張性と柔軟性を考慮したSSOシステムの選定が重要だ。カスタマイズ性が高く、APIやSDKを提供しているSSOシステムは、自社の環境に合わせた柔軟な対応が可能である。また、SSOシステムのアップデートや新機能の追加に対する対応力も確認しておく必要がある。
製品名 | ベンダー名 | 特徴 |
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Microsoft Entra ID(旧Azure Active Directory) | 日本マイクロソフト | Microsoftが提供するIDaaS。Microsoft製品との連携が強みだが、OpenID ConnectやOAuth、SAMLなどの方式にも対応 |
Okta Workforce Identity Cloud | Okta Japan | Oktaが提供するIDaaS。幅広いクラウドサービスと連携が可能 |
HENNGE One | HENNGE | HENNGEが提供する国産IDaaS。SSOやMFAを提供するとともに、プランによっては電子メールセキュリティの機能も付帯 |
GMOトラスト・ログイン | GMOグローバルサイン | GMOグローバルサインが提供する国産IDaaS。全機能を低価格で利用でき、無料プランも提供 |
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