また、「クラウド管理型無線LANソリューション」市場にも注目したい。図2に示すのが無線LAN機器市場をクラウド管理型無線LANとそれ以外で見た結果である。
青色の棒で示したクラウド管理型無線LANソリューションは、2015年時点では7億2400万円規模で、まだまだシェアは低いのだが、2016年からは本格的に市場が立ち上がる勢いを見せている。
グラフの緑色の折れ線がクラウド型無線LANソリューションのシェアの拡大傾向を示しており、2016年では全体の約7%程度だが、2019年には16%に迫る勢いでシェアを伸ばすと見込まれる。その勢いは、図に見る通り、非常に直線的で急角度の右肩上がりだ。2019年のクラウド管理型無線LANソリューションの市場規模は約42億円に達すると予測している。
2014年〜2019年の年間平均成長率は77.0%と、同期間の企業向け無線LAN機器市場全体の年間平均成長率マイナス0.4%とは対照的に大きな成長が見込まれる。
クラウド管理型無線LANソリューション市場は、国内では2014年に実質的に誕生した。ここで、このソリューションのあらましを簡単に説明しておこう。
例えばシスコシステムズの「Meraki」ソリューションがある。これは、無線LAN AP、スイッチ、UTM、MDM(モバイルデバイス管理)ツールまでの同社の対応製品ラインアップを全てクラウドから運用管理可能にするソリューションだ。無線LANを中心にその周辺のネットワーク環境および端末運用までも含めたスコープの大きなソリューションになっている。
さらに例を挙げれば、国内ではサンコーテレコムが代理店として販売している「Aerohive」も同様に、無線LANAPのマネジメント機能をクラウドから利用することが可能なソリューションだ。また、UTM大手のフォーティネットは、「FortiCloud AP Network マネージドセキュアワイヤレスソリューション」として、UTM機能と無線LANコントローラー機能を備えたソリューションの提供を始めた。ネットギアなども同様のソリューションを提供している。
クラウド管理型無線LANソリューションの利点は、高額な無線LANコントローラーを購入することなく同等の機能が利用できるところと、AP設定の方法がオンプレミス導入よりもシンプルになるところだ。
実際、無線LANコントローラーは機能豊富であるだけに、運用管理に専門的なノウハウを必要としていた部分があった。クラウド管理型無線LANソリューションの場合は、例えばチャネル調整、電波強度の調整、ローミングの設定、ロードバランシングなどのAP制御機能、さらにファイアウォール、アクセスコントロールなどのセキュリティ機能を備え、音声トラフィックも最適化できるQoSポリシー設定も可能なものがある。
これらを以前よりも容易に設定でき、専門的な技術知識をそれほど必要としないところが特長だ。さらに有線LAN、WANの制御も含めたトータルなネットワーク最適化ソリューションへと発展する要素を備えているのがクラウド管理型無線LANソリューションである。
このようなクラウド管理型無線LANソリューションは、中堅規模以上の、多くのAP設置を必要とする企業に向くだろう。また、それ以下であっても拠点数(例えば店舗など)が多く、それぞれに無線LAN環境を構築したい場合などには好適な選択になりそうだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
製品カタログや技術資料、導入事例など、IT導入の課題解決に役立つ資料を簡単に入手できます。