HRテックでは多くの製品やサービスが乱立する。その定義を理解するには、HRテックの歴史を整理することが役に立つと加藤氏は話す。同氏は、歴史の大きな流れを「人事の仕事を効率化させるテクノロジー」から、「人を育成するテクノロジー」への拡張と発展であると表現した。その軌跡を説明したい。
加藤氏によれば、人事の仕事を効率化するシステムとしての「HRテック」が生まれたのは、2000年ごろ。人事にまつわる情報をデータベース化して記録し、人事業務の生産性を向上させたり、コンプライアンスや手続きを効率化させるための人事管理システムが普及を始めた。具体的には、人事台帳整備や給与計算、勤怠管理などが例として挙げられる。また、そうしたシステムのデータは会計に連動するため、ERPの導入も同時期に起こったという。
次にフォーカスが移ったのは採用管理システム(ATS)による求人管理や応募者管理を行うシステムだ。これと同時に、採用者の雇入契約登録届け出(行政への電子申請)などを可能にしたり、従業員の入退社を管理したりするシステムも登場した。ここまでが、データの記録によって業務効率化に取り組んだ時代だ。
その後、タレントマネジメントの概念が登場する。従業員の能力を最大化させる目的で、人事管理データベースに部署の目標や個人の目標設定および評価、異動および配置、個人の希望や計画、後任人事情報などを含めた情報を格納し、管理するためのシステムが登場した。
このフェーズからHRテックの目標は人材の育成の方向にシフトする。「人財=ヒューマンキャピタルマネジメント」マネジメント(HCM)」の概念が生まれたのもこのころだ。
2014年ごろから米国で、2017年ごろから日本での導入が増えているのがエンゲージメントシステムである。これは従業員一人一人の潜在能力を最大化させることにフォーカスしたシステムだ。従業員満足度などのサーベイや福利厚生、インセンティブ、コミュニケーションなどをシステム上で管理することで、人材の適材適所を可能にするシステムだという。
また、このような流れの中で人事情報に関連するデータは増大を続けた。これによって人事部門では、データを用いた分析が可能になった。AIを活用した予測、分析も使われるようになる。これはピープルアナリティクスシステムと呼ばれ、レポーティングや各種予測ツール、従業員のネットワーク分析などの機能を備えるという。
さらに今後の予想として、外部人材を活用するシステムが台頭するといわれている。例えば、フリーランスマネジメントシステム(FMS)による外部業務受託者管理システムは成果の評価や契約、支払いを管理するもの。既に米国では導入が進んでいるという。そして、チーム&ワークマネジメントシステムとは、こうした機能の他、外部スタッフの能力を評価して、適切な人材を組み合わせ、より高い生産性を上げるための分析や管理を行うものだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
製品カタログや技術資料、導入事例など、IT導入の課題解決に役立つ資料を簡単に入手できます。