増税と同時に実施が検討される「キャッシュレス決済でポイント還元」案。中小規模の商店や小売り店にとっては「どう対応するか」が課題になる。LINEが決済サービスに加え、事業者サポートサービスを発表。競合がひしめく中、LINEらしさを打ち出した。「そもそもLINE Payで何ができるか」から見ていこう。
2019年10月に控えた消費増税では、現在、中小の店舗を対象にキャッシュレス決済に対する優遇措置が検討されている。本稿執筆時点では決済額の5%程度をポイントとして還元する案が有力だ。
こうした「追い風」を受けて、モバイル送金・決済サービス「LINE Pay」を運営するLINE Payは、地方拠点を拡充、決済サービスの展開と同時に中小規模事業者向けのサービス展開を強化する。
11月26日に開催された「LINE SMB Conference」は、LINEおよびモバイル送金・決済サービス「LINE Pay」を展開するLINE Pay、仕事用のLINE「LINE WORKS」を提供するワークスモバイルジャパンの3社が、中小規模事業者向けのサービス強化を打ち出すイベントだった。当日は複数の発表が行われたが本稿では、モバイル送金・決済サービス「LINE Pay」のサービスを紹介する。
LINE Payは、スマホ決済だけでなく、QRコードによる決済や、クレジットカード決済端末に似た専用端末による決済にも対応するサービス。
複数の決済方法を提供することで、屋台から店舗型のビジネスまでのニーズに幅広く対応できる点も特長の1つだ。
キャッシュレス決済とはどういったものだろうか。LINE Payの場合で見ると、キャッシュレスとはいえ、現金がまったく不要になるわけではない。決済の手続きに「現金」を持たなくて良いという意味では、クレジットカートや交通系などのICカードからさほどかけ離れてはいない。利用者は、銀行口座やクレジットカードを介してチャージしたお金をキャッシュレスで支払い、送金などに利用できる。クレジットカードなどと異なるのは、「アプリ」を介して決済や送金もできる点だろう。ではLINE Payは何が特長だろうか。
LINE Payの場合は、物品の購入などで利用できる他、無料通話アプリ「LINE」の「友だち」で、LINE Pay決済の利用者同士であれば、ユーザー同士の送金や送金依頼、割り勘の手続きをアプリ上で完結できる。LINE Payでは取り扱い店舗を拡充すべく、2018年内の申し込み企業に限って、据え置き型端末を無料配布する(決済手数料の無料期間は2021年7月31日まででとしており、それ以降は2.45%の手数料がかかる)。
とはいえ、個人事業主や予算規模が大きくない事業者にとって、キャッシュレス決済の仕組みを新たに導入するのはハードルが高く、決済までの現金をどう確保するかも課題だった。
この他、決済サービス利用事業者の利便性を高めるため、入金タイミングについても、従来の「月末締め翌月末払い」だけでなく「希望日に入金」に変更できるよう2019年の早い段階でサービスを改善する計画もあるという。
小規模な事業主にとってキャッシュレス決済の導入は、端末費用に加え、手数料負担や決済タイミングのずれによるキャッシュフロー悪化リスクが想定される。そこで、決済タイミングを自由に設定できるようにして、財務リスクを最小化して導入障壁をなくそうという考えだ。
なお、このイベントの翌日である11月27日には「LINE Pay Global Alliance」として、中国を中心に「WeChat」を展開するTencentの電子決済サービス「WeChatPay」などとの提携を発表している。サービスの互換性を持たせ、例えばWeChatPayユーザーがLINE Payプラットフォームでそのまま決済できるようになる。
LINE Payと同様のサービスとしては、ソフトバンクなどが出資する「PayPay」もある。こちらも店舗での導入費用は無料で、Aribabaが提供する「Alipay」と互換性がある点が特長だ。それ以外にも多様なバックグラウンドを持つ企業がキャッシュレス決済サービスを開始しており、群雄割拠の様相を呈している。
競合が多数ひしめくキャッシュレス決済市場で、LINE Payは何を強みとするのだろうか?
LINE Pay決済の特長の1つに、決済ユーザーのアカウントとつながることができる点が挙げられる。LINE Payでは法人アカウントの「友達追加」機能を解放するとしており、法人アカウントがない企業であっても、2019年1月からは据え置き端末を利用する企業向けに「マーチャントPRサービス」を展開する予定だ。これにより、利用企業は決済をきっかけとした顧客との接点拡大を期待できる。
さらに2018年11月26日には企業会計サービスを運営するfreeeのサービスを「LINE店舗経理」としてOEM提供することも発表した。今後は「LINEトーク」で「チャットbotの質問に答えていくと自動的に個人事業主が確定申告をする際の準備ができる機能」や「店舗の経営に関する情報をLINEアカウントで通知する」などの機能も追加する計画があるという。
なおLINE Payでは2017年12月に店舗・企業向けLINEアカウント「LINE@」を販売・運営するLINE Business Partnersと合併しており、今後は個人事業主を含む店舗などのマーケティング支援と決済サービスの両方を支援するサービスを展開する。このため、従来の企業向けアカウントサービス「LINE@」を統合して新たなアプリをリリースする計画だ。「新しいアプリではAPIを公開。細かなメッセージ制御が可能になるため、パーソナライズした告知や自社サービスポイントなどの仕組みと連携するといった複雑な運用も可能になる」としている。
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