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最初の緊急事態宣言から2年……改めて見直されたオフィスの存続価値

テレワークや時差通勤など働き方の変化も求められてきた。働き方や働く人の意識はどう変化したのだろうか。アステリアとサイボウズ、ZVC Japan、レノボ・ジャパンの4社が合同で調査を実施した。

» 2022年04月12日 10時00分 公開
[キーマンズネット]

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行により、2020年4月7日に初めての緊急事態宣言が発令されてから2年が経過した。政府によるイベントの自粛や一斉休校、外出自粛要請が出され企業はテレワークへの移行を画策し始めた。感染状況の変化に併せて緊急事態宣言やまん延防止等重点措置などが繰り返される中、テレワークや時差通勤など働き方の変化も求められてきた。働き方や働く人の意識はどう変化したのだろうか。

 アステリアとサイボウズ、ZVC Japan(以下、Zoom)、レノボ・ジャパン(以下、レノボ)の4社は2022年4月7日、初めての緊急事態宣言発令から2年が経過したことを契機に、全国の20〜60代のフルタイムで働く就業者2000人を対象とした「これからの働き方を考える」という4社合同の調査を実施した。

4社合同会見の様子(オンラインにて開催)

 同調査では、多くの人が2年間のテレワーク体験から自由な働き方ができる未来を描くようになったと判明した。同時に、コロナ禍初期から懸念されていたテレワークのコミュニケーション不安が残存していることやリモート会議が長時間化した、勤務時間中に他のことをしてしまうなど、いくつかの課題が顕在化した。

「テレワークできる職種だが未実施」という回答も一定数

 まず、同調査における回答者のテレワーク実施状況(月2回以上)についてだ。COVID-19の流行前は、テレワーク実施率は7.1%だったのに対し、2020〜2021年の緊急事態宣言中には29.5%と上昇した。2022年現在は25.8%となり、緊急事態宣言中に比べるとやや減少傾向が見られるものの引き続き4分の1の回答者がテレワークしていることが分かった。

テレワーク実施率の推移(出典:4社合同会見資料)

 調査ではテレワーク未実施者の意外な割合も明らかとなった。もちろん、テレワークの未実施者の多くは「テレワークができない職種」に従事する回答者だ。しかし、「テレワークできる職種」の内「テレワーク未実施」とする回答者は166人で一定の割合を占める結果となった。調査では、「これまでにテレワーク経験がない人」ほど将来的なテレワーク意欲が低い傾向にあった。

職種ごとのテレワーク実施可否と導入の割合(出典:4社合同会見資料)
テレワークが選択可能な働き方を望むかどうか(出典:4社合同会見資料)

テレワークの課題調査 オフィスの存続が必要な理由とは?

 では、テレワーク未実施企業はテレワークに対しどのような懸念を抱いているのだろうか。

 テレワーク制度を導入しにくい、できない理由として多く挙げられたのは社内/社外関係者とのコミュニケーション課題やオフィス以外の就業環境、テレワークの業務ルールの未整備などだ。

テレワークしにくい/できない理由は(出典:プレスリリース)

 調査結果では“オフィスの存在価値”も改めて見直された。テレワークも選択可能な場合の「働く場所」について尋ねたところ、約6割が“今後もオフィスはあった方が良い”と回答した。今後もオフィスがあった方がいいと思う理由として、「業務に使用する機器がある(プリンタ/コピー機など)」「資料やデータを保管する」などが上位にあがり、自宅や外部にはない事務効率を高める機能が重視されていることも分かった。

 レノボの代表取締役社長デビット・ベネット氏は自身の経験から「私は米国の半導体企業に勤め、生粋の“外国人社長”として日本の企業文化に触れてきました。働き方改革が進むにつれて、会議の多さ、『ハンコ文化』など“テレワークのバリア”になる文化も多いです」と指摘した。プリンタやコピー機、資料の保管といった紙を前提とする回答が多いことも日本企業の文化ならではの結果だろう。

オフィスがあった方がいい理由は(出典:プレスリリース)

 さらにアステリアの代表取締役社長/CEO 平野 洋一郎氏は「今後は、オフィスでの執務を『主』ではなく多様な働き方の『選択肢』とするなど、オフィスの役割を再定義する必要が生じます」とし、Zoomの社長、佐賀文宣氏は「テレワークで働くことで、『関係者とのコミュニケーションが取りにくくなる』という懸念を抱える方が多く、オフィスが必要な理由も、『職場の仲間が集まる場所がいる』『会って議論をすることで業務効率が上がる』という理由が多いことから、社員のエンゲージメントの改善が求められていると読み取れます」とコメントした。

 サイボウズの代表取締役社長 青野慶久氏は「調査で『テレワークできる職種なのに導入されていない』という中小企業も多いことが分かりました。テレワーク定着には、経営トップによる『できるところからテレワークをやってみよう』というコミットメントや、ツール・制度・風土を整えることが大切です。特に、テレワークに向けてデジタルツールを導入・活用することで、今まで以上に情報共有が進み、生産性の向上に期待できます。また、テレワーク定着により働く場所の制限がなくなることで、採用の幅も広がります。今の日本の中小企業には『テレワークリテラシー』の向上が求められます」とした上で、「テレワークにおいて、オフラインで会うことと同じようにオンラインで関係を構築するコツは情報共有ではなく“状況共有”を細かくすることです」と助言した。

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