米国では、賃金上昇トレンドが続いている。2022年は多くの企業が給与を引き上げ、2023年も前年比増額を計画している。その背景には、景気後退を前にした企業の思惑があった。
2023年は労働者の給与上昇傾向が続く可能性がある(注1)。Salary.comが1000人以上の人事担当者を対象にした調査によると、米国企業の約半数が、2023年の人件費を2022年よりも増額する予定だ。
Salary.comによれば、2022年は多くの企業が給与を引き上げ、2023年も前年比増額を計画している。2021年に給与の引き上げを実施した企業はわずか12%であったのに対し、2022年は22%の企業が4〜5%の昇給を実施した。昇給率の年間基準は3%であることから、従来よりも上昇していると分かる。
回答企業の約4分の1が2023年には「5〜7%の昇給を予定している」と回答していることから、2023年の昇給率は2022年の昇給率を上回る可能性がある。
2022年における総支給額の昇給率を地域別にみると、太平洋岸北西部の企業は5%の上昇を示した。これはアメリカ全州における昇給率の中央値を平均した4%という数値を上回る。業種別では、2022年の総支給額の昇給率はヘルスケア分野が3%で推移し、全米中央値の平均4%を下回る。
2022年後半に考慮すべき人事問題と同様に、賃上げは企業にとって頭の痛い問題だ。
景気後退のリスクによって、これまで堅調だった採用市場が冷え込みつつある(注2)。一方で企業は、人材の流出を防ぐために景気後退に備えた戦略を立て始めている(注3)。
この影響のせいか、Willis Towers Watsonが実施した調査では、回答企業の86%が給与水準の高い候補者を採用し、31%が従業員の給与をより頻繁に調整することを計画または検討しているようだ。同社が発表した別レポートも、企業は2023年に平均4%強の賃上げを計画しているが、これは2008年以来最も高い昇給率だ。
こうした指標やその他の指標は、2023年が「昇給を求める従業員にとっての当たり年」になる可能性を示していると、Salary.comのクリス・ファスコ氏(報酬担当シニアバイスプレジデント、)は声明で述べている。
一方、Workhumanの「Human Workplace Indexレポート」によると、従業員は、「不況時には真っ先に昇給がなくなるのではないか」と懸念している(注5)。しかし、同レポートでWorkhumanは「自分の給与やチームの給与モデルに満足している従業員は、企業に忠実であり続ける可能性が高い」とも述べる。
最近のiHireの調査では、企業の半数以上が「求人情報に給与範囲を“常に”記載している」と答えている(注6)。労働市場の状況は給与の透明性に関する議論を活発化させる。企業は、給与の透明性について議員から何らかの働きかけを受けているようだ。カリフォルニア州は近々、求人情報における給与の開示要件を実施する州および地方の管轄区域のリストに追加される予定だ(注7)。
出典:2023 could be banner year for pay increases, survey finds(HR Dive)
注1:Trending Salary.com Data Indicates the Days of Annual Salary Increases In the 3% Range Are Over
注2:Breaking down the monthly BLS job report
注3:Hiring is fraught as employers consider ‘labor hoarding’ for looming recession
注4:Employers plan 4.1% pay raises for 2023 the largest since the Great Recession
注5:Salary freezes, pay cuts top worker concerns amid a recession
注6:Tight labor market is driving job post transparency, iHire survey finds
注7:California strengthens pay transparency, reporting mandates
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