米Starbucksが軍人とその家族を従業員として雇用したり、メンタルヘルスをサポートしたりする取り組みを強化している。同社のこの施策にはどのような背景があるのだろうか。
米Starbucksは2023年7月31日(現地時間)、軍人(退役軍人含む)とその配偶者の転勤の柔軟性やメンタルヘルスのサポート、学習と能力に関する新たな取り組みを発表した(注1)。
同社は退役軍人のキャリアを支援する従業員グループと協力し、退役軍人本人とその家族のサポートをさらに充実させる。同社のこの取り組みには、米国が抱える“ある社会問題”があった。
本稿で取り上げた取り組みの背景には、退役軍人に関して米国が抱えている社会問題がある。イラク戦争やアフガン戦争では、それまでの戦争に比べて短いサイクルで、かつ複数回に分けて兵士が派遣された。また、医療の進歩で一命をとりとめる兵士が増えた反面、多くの退役軍人も生み出された。そのため、近年は退役軍人のメンタルヘルスの不調や社会復帰の困難などが社会問題となっている。
参考:退役軍人のアメリカ政治における役割(日本国際問題研究所)
同社は、「軍人の家族は平均して約2年半ごとに転居する」と指摘し、転勤による人材の異動を支援するサービスを開始した。また、「ベテラン従業員とその家族が個別のメンタルヘルスサポートを受けられるようにする」ために、ヘルスケア関連の福利厚生サービスを提供するLyra Healthとのパートナーシップを構築している(注2)。
米Starbucksは2017年に退役軍人や難民の人材をさらに雇用すると公約していた。翌年、同社は米国商工会議所財団の「Hiring Our Heroes」キャンペーンに参加し、2021年末までに10万人の軍人配偶者を雇用することを約束した(注3)。
2023年は同社の企業ブランドにとって、さまざまな事が起きた年になった。同社の従業員がLGBTQプライドの装飾の撤去や労働組合の破壊、企業による誠実な交渉の欠如に抗議してストライキを行ったことで、LGBTQ+を包括する企業(特に、ジェンダーを肯定する医療給付を早期に導入した企業)であり、従業員教育のリーダーとしての同社の評判は影が薄くなってきている(注4、5、6)。
同社は、この軍人家族と退役軍人の支援は従業員リソースグループ(従業員が主体となって運営するグループ)であるStarbucks Armed Forces Network(退役軍人やその家族を支援する従業員団体)との継続的な対話の結果であると述べている。同社の最高経営責任者(CEO)のラックスマン・ナラシンハン氏は、「同団体からのフィードバックは、支援を必要としている人々に革新的で業界をリードするサポートを提供する上で非常に貴重だ」と述べ、次のように続けた。
「私たちは軍人の家族や支援者を私たちの従業員として迎えることを誇りに思っており、さらに多くの人々を採用できることを歓迎する」
出典:Starbucks re-ups commitment to military talent(HR Dive)
注1:Starbucks Strengthens its Support for the U.S. Military Community(businesswire)
注2:Starbucks Hiring Efforts for Military, Youth and Refugees(Starbucks)
注3:Starbucks Joins the U.S. Chamber Foundation’s Hiring 100,000 Military Spouses Campaign(Starbucks)
注4:Starbucks now covers cosmetic surgery for transgender employees(HR Dive)
注5:The Starbucks “free college” benefit may actually be working(HR Dive)
注6:Starbucks union plans largest strike yet over Pride decorations(HR Dive)
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