ロー/ノーコード開発ツールに今後連携させたいソリューション1位は「オワコン説」がささやかれるあのツールだった。キーマンズネット調査に寄せられた読者の声を紹介する。
内製化を進める企業の選択肢の一つとなるローコード/ノーコード開発ツール。キーマンズネットによる「ローコード/ノーコード開発ツールの利用状況に関する調査」(実施期間:2024年10月11〜30日、有効回答件数:187)の結果を基に、前編では、内製化の取り組みの「現在地」に迫り、中編ではローコード/ノーコード開発ツールの導入効果を「期待を下回る」と評価したユーザーの共通点を紹介した。
後編となる本稿では、ローコード/ノーコード開発ツールの利用方法や、今後連携させ、利用する上でユーザーが不満を抱いている点などを紹介する。
ユーザーはローコード/ノーコード開発ツールを今後、どのように使うつもりなのか。
システム開発において、ツールによる開発割合はどの程度になる予定かを聞いたところ、「1〜5%」(28.3%)や「6〜10%」(25.0%)を合わせると1割以下を念頭に置くユーザーが過半数を占めることが分かった。
従業員規模別では、「11%以上」を選んだ割合が最も大きかったのが5001人を超える大企業(44.4%)だった。前編で取り上げた「内製化への取り組み状況」と同様に、従業員規模が大きくなるほどローコード/ノーコード開発ツールによる開発の割合が大きくなる傾向にあるようだ。
現在ローコード/ノーコード開発ツールと連携しているツール、今後連携させたいツールはともに「RPA(Robotic Process Automation)」が最多だった。今後連携させたいツールとしては「ChatGPTなどの生成AI」(41.6%)や「AI-OCR」(27.0%)、「画像認識AI」(16.9%)が続いた。生成AIやAIと連携することで、スピーディでコストを抑えた開発が期待できる他、環境が整備できれば、外部に公開できない社内データも活用できるだろう。
前編で触れた通り、内製化に着手している企業は過半数を占める。しかし、ローコード/ノーコード開発ツールを利用した内製化の進捗(しんちょく)状況は大きく異なるようだ。
ローコード/ノーコード開発ツールの活用について寄せられたフリーコメントの中には、「CRM(顧客関係管理)システムを内製化し、よりきめ細やかな顧客対応が可能になった」と着実に成果を出している企業がある一方で、「CRMおよびライセンス系の資産管理のためにアプリケーション(アプリ)を開発した。CRMアプリは一部メンバーのみの利用にとどまっている」など運用課題に直面する企業、「内製化は年に何回か上層部から指示されるが、実現範囲は広がらない」「進んで開発しようという環境や雰囲気がまだ醸成されていない」のように取り組み意欲はあっても着手に至らない企業もあるようだ。
こうした課題を解消するにはどうすればいいのか。今回の調査では、内製化を支援するローコード/ノーコード開発ツールへの要望が多数寄せられた。主に事業部門で利用している回答者からは「初心者や高齢者でもとっかかりやすいインタフェース」「ツールの運用方法が分かりづらい。開発者に教育して欲しかったが、結局マニュアル配布だけで終わってしまった」「開発未経験者への初期教育プログラムの充実」といったツールの利用や運用のしやすさ、学びやすい環境の整備を求める声が多かった。
一方、開発部門や情報システム部門の回答者からは「ツールでできること・できないことの判断が資料から読み取るのが難しく、PoCを実施するしかなかった」「ドキュメントにできること、できないことを『システム移行、乗り換え目線』で記載してほしい」といった、情報収集段階でアクセスできる製品情報の充実を求める声が多く見られた。
「せっかく開発したのに数年でツールが別製品に変更され、変換ツールなどが一切サポートされなかった」「契約以降はこちらから質問しないとフォローアップされない」といったサポートに関する不満も多かった。
キーマンズネットの調査には、読者から内製化が進まない理由、ローコード/ノーコード開発ツールへの要望として、次のようなコメントも寄せられている。
内製化が進まない理由
- 自習を始めたが、途中で断念した
- もともとベンダーのシステムを活用しており、自社開発のノウハウがない。こうした体制の中でシステム開発はおろかプログラミング開発も初学者レベルの者を集めて内製化させようとしているため、全く内製化が進んでいない
ローコード/ノーコード開発ツールへの要望
- 長期間サポートするか、次期ツールの下位互換・変換ツールの提供など、一度開発したシステムを無駄にしない取り組みを要望したい。何回も作り直ししているうちに、コストや時間が(通常の)アプリ開発と差がなくなる
- 大規模なシステム開発にも対応できるスケーラビリティの向上を希望
- 単独利用することは少ないため、各種連携機能は標準(無料)で実装して欲しい
- 直感的なUIのつもりなのだろうが、マニュアルが薄くて(利用方法の)調査に時間を要する
- 各社の開発ツールの使用経験をヒアリングして、より良い活用方法を提案してくれれば、非常に使いやすいツールになるのではないか
- 日本語で設定できるようにしてほしい
- 設定の動画を充実させて欲しい
開発経験の浅い、あるいは全くないユーザーでも開発できることから、事業部門を主体にした取り組みを想定する企業も多い中で、利用を拡大するための学習環境の整備や運用体制づくりなどが求められていることがコメントから伝わってくる。ツールの利用方法が分かりにくい、あるいは利用方法を解説した文書が読みづらいという声も多数寄せられた。
自社内での利用定着、利用拡大の取り組みに限界を感じている読者からはベンダー、あるいはパートナー企業に内製化の伴走支援を期待する声が上がった。
ITRの調査によると、ローコード/ノーコード開発ツールは、AIブームを受けて2025年度に向けた導入意欲が高まっている。AIの活用が本格化する中で今後、活用用途も多様化が進むと予測される同ツールを今後も注視していきたい。
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