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対向車が突っ込んでくる……自動運転が乗っ取られる重大リスクとは:658th Lap

自動運転技術の実用化はまだ遠いものの、研究は着実に進んでいる。しかし、この重大なリスクが解消されなければ、自動運転が現実のものとなるのは難しいだろう。

» 2022年04月22日 07時00分 公開
[キーマンズネット]

 技術の進展により、車の自動運転は現実味を帯びてきた。自動運転にはレベルが設定されている。自動運転システムを搭載しない車が「レベル0」で、何らかの運転支援システムが搭載されていれば「レベル1」、部分的に自動運転が可能な車は「レベル2」といった具合だ。

 条件付きで運転の自動化が可能になる「レベル3」になると、ドライバーは緊急時以外は運転操作をしなくてもよくなる。そうなれば、本格的な自動運転時代の到来となる。日本でもレベル3の自動車の公道走行が認められている。

 期待が寄せられる自動運転技術だが、ある研究チームは車同士の衝突などの事故を起こしかねない重大なリスクを発見した。

 米国デューク大学とミシガン大学の研究チームは論文「Security Analysis of Camera-LiDAR Fusion Against Black-Box Attacks on Autonomous Vehicles」で、自動運転車へのサイバー攻撃について発表した。

 その論文によると、自動運転車へのサイバー攻撃はネットを介すのではなく、自動運転車に搭載されている「センサー」を“だます”ものだという。

 自動運転車には多数のセンサーが搭載されている。カメラが障害物や歩行者を認識し、LiDAR(ライダー)と呼ばれるレーザー光センサーによって周囲との距離を計測することで、自動運転やドライバーの操作をサポートする。

 論文では、カメラとLiDARを搭載した自動運転車へのサイバー攻撃が可能だとしている。研究チームでの実験によれば、LiDARのセンサーに向けて外部からレーダーを射出することで、LiDARが本来計測する外的データを「誤解」させることが可能になるという。

 LiDARは、レーザーなどを照射してその反射を読み取って距離を計る。その反射するレーザーを偽造するというわけだ。カメラとLiDARを併設する最近の自動運転車の場合、画像とレーダー計測の数値に大きな誤差があれば、異常な事例として処理していた。しかし研究チームが今回実現した攻撃方法では、カメラの認識範囲内に偽レーザーを射出することで自動運転システムの誤解を生み出す。

 例えば、対向車線の車とすれ違ったとき、その車のカメラが対向車を捉えたタイミングで偽レーザーを射出することで、あたかもその車が猛スピードで真正面から突っ込んでくるかのような誤解を生み出すことが可能だという。誤解したシステムは、急ブレーキを踏んだり急ハンドルを切ったりと誤った回避行動を取ってしまう。この誤動作は、アクセルやブレーキ、ハンドルを制御できるレベル2以上の自動運転車で起こり得るという。

 研究チームはこのサイバー攻撃の回避方法として、複数のカメラを搭載することを提案する。LiDARだけに頼らず、ステレオカメラにより複数の視野を撮影して解析することで対象の距離を正確に推定し、LiDARの測定を裏付ける判断を行なうことで、偽レーザーを浴びたとしてもそれが「偽物」だと判断できるようになるという。

 もう一つの解決策として、搭載された自動運転システム同士が周囲の計測データを共有し合う自動運転システムの開発を挙げる。複数の自動運転車に対してレーザーを射出して誤動作させるのは技術的に困難なことから、周囲のデータを共有してリアルタイムで分析すれば誤動作は起こりにくいのではと考えられている。

 今回、研究チームが行った攻撃はあくまで実証実験だが、自動運転車へのサイバー攻撃がいつ起きてもおかしくない。自動運転車のレベルは年々上がり、完全自動運転を可能とするレベル4、レベル5の登場もそろそろ視野に入ってくる頃だ。こうしたサイバー攻撃による被害が生まれないことを願うばかりだ。


上司X

上司X: 自動運転車へのサイバー攻撃手法が見つかった、という話だよ。


ブラックピット

ブラックピット: 普通にすれ違う車が前から突っ込んでくるかのような誤解を生み出す、ですか。怖い怖い。


上司X

上司X: 怖いねえ。ドライバーからしたら「何ですれ違っただけで急ハンドルを?」となるよな。


ブラックピット

ブラックピット: 原因が分からなければ、自動運転車に対する不信感が募ることにもなりますね。


上司X

上司X: そうだな。まだまだ発展途上だけど、車両制御を可能にしたレベル2の自動運転車は増えているようだ。


ブラックピット

ブラックピット: ですよね。これからレベル3、レベル4も登場しようかというのに……。


上司X

上司X: ちなみにレベル4は限られた領域なら完全自動運転が可能で、その他の道路ではレベル3相当ってことな。そしてレベル5はどこでも完全自動運転できると。さすがにレベル5ともなるとまだ時間はかかるだろうけどな。


ブラックピット

ブラックピット: レベル5の完全自動運転だとアクセルもブレーキもないんですよねえ。何というか車を運転するという楽しみが……。


上司X

上司X: そんな「運転のロマン」みたいなのはごく一部の娯楽になっていくんじゃないのかな、自動運転車が普及したら。自動車が普及しているのにあえて馬に乗る人もいなくはないだろう? そういう感覚になるんじゃないのかな。ともかくだ。自動運転が広く普及するためにも、こんな弱点は極力なくなることを望むしかないな。

川柳

ブラックピット(本名非公開)

ブラックピット

年齢:36歳(独身)
所属:某企業SE(入社6年目)

昔レーサーに憧れ、夢見ていたが断念した経歴を持つ(中学生の時にゲームセンターのレーシングゲームで全国1位を取り、なんとなく自分ならイケる気がしてしまった)。愛車は黒のスカイライン。憧れはGTR。車とF1観戦が趣味。笑いはもっぱらシュールなネタが好き。

上司X(本名なぜか非公開)

上司X

年齢:46歳
所属:某企業システム部長(かなりのITベテラン)

中学生のときに秋葉原のBit-INN(ビットイン)で見たTK-80に魅せられITの世界に入る。以来ITひと筋。もともと車が趣味だったが、ブラックピットの影響で、つい最近F1にはまる。愛車はGTR(でも中古らしい)。人懐っこく、面倒見が良い性格。


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