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スマートフォン内線化は、実現方式で何が違う?IT導入完全ガイド(2/5 ページ)

» 2014年01月14日 10時00分 公開
[土肥正弘ドキュメント工房]

スマホ内線化の実現方法

 スマホ内線化には、次の3方式がある。

  1. スマホ内線化に対応した機能を持つIP-PBX(および同等機能のアプライアンスなど)またはSIPサーバを利用する方式
  2. PBX機能のクラウドサービスを利用する方式
  3. 携帯電話キャリアの「FMC(Fixed Mobile Convergence)サービス」を利用する方式

 以下ではそれぞれについて主な特徴を紹介していくが、ベンダーの提供するソリューションはそれぞれ個性をもっており、必ずしもここで述べる機能に限られるものではなく、また仕組みの違いや対応しない機能もある。一例としてご理解いただきたい。導入検討時には各社ソリューションの詳細の調査や説明依頼を行うことをお勧めする。

IP-PBXなど交換システム刷新に合わせてスマホ内線化も実現

 メリットが実感しやすいのは、上記(1)の方式だ。スマホ内線化に伴い老朽化した既存PBXの置き換えが実行できる場合だろう。

 既に10年以上同じPBXを使い続けていて装置の老朽化が心配な企業も多い。この先そのまま保守料金を支払い続けてよいのか、また音声ネットワークとデータネットワークの2系統を運用し続けてよいのかと悩みながらもPBX更改のタイミングを逸してきた会社に、スマホ内線化はPBXリプレースのよいきっかけになりそうだ。

 さらにスマホをBYOD化することにより、業務効率向上や端末コスト削減が図れる一方で、懸案だった旧型PBXと音声ネットワークの保守コストを一掃でき、データネットワークに統合することが可能なのだ。

 図1に、IP-PBXと同等の役割を果たすアプライアンス製品を使う場合の構成例を示す。このシステムの場合はサービス統合型ルーターにPBX用のソフトウェアを組み合わせたアプライアンスになっている(以下ではIP-PBXや他のアプライアンスを含めてPBXサーバと呼ぶ)。

 本社には音声通信の全ての交換制御を行えるPBXサーバを設置し、スマホの通信は社外では携帯電話網、社内ではVoIP用のアクセスポイント(AP)を介してネットワークにつなぐ。固定IP電話もそのネットワークに接続する。IPネットワーク上で伝送できる音声通話なら、他の拠点に設置した、比較的低価格のルーターで拠点内のスマホや固定電話に接続し、従来の拠点間内線と同様に利用できる。本社と遠距離拠点の外線は、本社のPBXサーバを経由して公衆電話網および携帯電話網に接続し、外部との発着信が行える。

PBXサーバを用いてスマホ内線化、IP電話化を図る場合の構成例 図1 PBXサーバを用いてスマホ内線化、IP電話化を図る場合の構成例(出典:エス・アンド・アイ)

 スマホはIP電話機の1つとして動作し、ネットワーク端末としての位置付けになるので、遠隔地間での通話料が発生しない。たとえ拠点が海外にあったとしても、同じように拠点のVoIP対応ルーター(ゲートウェイ)と本社のPBXサーバとを接続すれば国際電話料金も発生しないことになる。

 またスマホを持って外にいる場合の外部への発着信の際の携帯通話料金を固定電話の通話料金と同等にすることが可能だ。

 スマホと会社が同一キャリアを利用し、そのキャリアが契約者間での通話無料サービスを行っている場合、スマホから外部あての発信は、いったんパケット網で相手先の電話番号をIP-PBXに送りIP-PBXからコールバックする形で接続する。次にIP-PBXは会社の電話番号を用いて外部の通話相手を呼び出し通話が成立する。

 IP-PBXと相手先の間は当然電話料金がかかるが、より低額な固定電話の料金で済むわけだ。相手先にはスマホの番号ではなく、会社の電話番号が表示される。

 外部から会社の電話番号(個人やグループ代表番号や会社代表番号など)に着信した場合、IP-PBXはまず応答する端末を会社の電話番号割り当てのルールに基づいて判別し、適切な端末を選ぶ。ユーザーがスマホで応答操作をすれば、PBXサーバが発信元とつなぐ仕組みだ。無線LANを使ったVoIP方式ならば通話料はかからない。

 このとき発信元の電話番号は、PBXサーバの持つ番号になるため、元の発信者の番号はスマホ側に表示されないが、一部のスマホ内線化ソリューションでは、相手の番号を表示する技術を持っている。この場合、電車での移動中や会議中に着信して電話に出られなかった場合にも、相手の番号がスマホに残るため折り返し通話が可能になる。この機能はビジネスシーンでは、とても重要だ。

 図2にスマホ側の内線用アプリの画面例を示す。基本的に個人用途の通話はスマホ標準のダイヤラー(電話機能)を使い、業務用途の場合はスマホに内線用アプリ(ベンダーごとに異なる)をインストールして、内線用アプリ上のダイヤラー機能を利用して発信することになる。

スマホの内線用アプリの画面例 図2 スマホの内線用アプリの画面例(出典::エス・アンド・アイ)

 内線用アプリによる着信は、アプリの機能とPBXサーバの機能の連携により、次のような内線関連機能を実現できる。

  • 保留/転送
  • 自動転送
  • グループ内着信応答(コールピックアップ)
  • 留守録(ボイスメールとして利用可能)
  • リダイヤル(PBXサーバの履歴情報を利用)

 また、社内に無線LAN環境がある場合にはそれを利用し、無線LAN電波が届かないところでは自動的に携帯電話網に切り替えることができるようになっており、ユーザーが切り替えを意識して行う必要はない。無線LANか携帯電話網かどちらかに接続できればよく、社内でも利用エリアが広くなるわけだ。

 なお、かつては一部のスマホ内線化ソリューションで無線LANによるVoIP通話中に携帯電話網からの着信があった場合には通話がいったん切れてしまうことがあったが、最新のサービスではスマホへのメッセージ表示で現在の通話に優先して応答するかどうかを選択することができるようになっている。携帯電話網による社内PBXサーバ利用の通信なら話中状態なので問題がない。

 なお、リモートロックやワイプなど一部のMDM機能も備えるスマホ内線化ソリューションもある。

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