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2020年、企業が最も「カネをつぎ込みたい」と考えるIT投資分野は?

キーマンズネットの読者1329人に対して、勤め先における2020年のIT投資額の増減と投資分野について尋ねた。2019年は「Windows 10」へのリプレースに投資が集中したが、2020年は企業の焦点はどこにあるのか。

» 2020年02月14日 10時00分 公開
[岡垣智之キーマンズネット]

 キーマンズネット編集部では2020年に注目すべきトピックスとして「セキュリティ」「クラウド活用」「情報共有」「DX人材」「AI導入」「RPA」「働き方改革」の7つのトピックスを抽出し、読者調査を実施した(実施期間:2019年11月22日〜12月20日、有効回答数1329件)。企業における2020年のIT投資意向と併せて調査結果を全8回でお届けする。

 最終回となる第8回のテーマは「IT投資」だ。

調査サマリー

  • 2020年のIT投資額は「前年とほぼ同じ」が49.0%
  • 注力の投資分野は「社内IT基盤」が最も多く26.9%
  • 関心のあるIT分野は「AI/機械学習」に多くの票が集まる

2020年の投資動向は「横ばい」が減少し「増額」が微増

 2019年は「Windows 7」「Windows Server 2008」のサポート終了や働き方改革関連法の施行、元号の改正や消費税の増税など、IT担当者泣かせの“一大イベント”が集中した年だった。業務の自動化にも関心が集まり、RPA(Robotic Process Automation)は企業の関心を引き付けるものとなった。

 2020年はこれらの動きは一段落しそうだが、世界的イベントに向けたセキュリティ対策や先日にSAPからサポートの延長が発表された「2025年の崖」あらため「2027年の崖」問題、ISDN回線の終了に伴うEDI(電子データ交換)への影響などまだまだIT担当者の頭を悩ませる事案が待っている。

 こうした風潮を受けて、企業は2020年のIT投資計画をどう考えているのか。まずはIT投資額の増減を探るために「2019年度と比べて2020年度のIT予算はどのように増減する見込みか」を尋ねたところ、「ほぼ同じ」が最も多く49.0%、次いで「減額される」11.3%、「増額される」12.0%と続いた(図1)。

図1 2020年のIT投資の増減(n=1329)

 2019年の結果と比較すると「ほぼ同じ」が3.4ポイント減少し、その分「減額される」が3.9ポイント、「増額される」が1ポイント増加した。2020年も横ばい傾向に変わりはないが、わずかにIT投資意欲の減少傾向が見られた。

2020年に投資予定のIT分野、気になる分野

 次に、「2020年度に投資を予定しているIT投資分野」について尋ねた。トップ5は、回答率の高い順に、「社内IT基盤(サーバ/ストレージ/ネットワークなど)」26.9%、「クラウドIT基盤(IaaS/PaaSなど)」21.9%、「業務の自動化(RPA/BPM/BRMSなど)」19.5%、「AI/機械学習」19.3%、「テレワーク/モバイルワーク環境整備」19.1%となった(図2)。

図2 2020年度に投資を予定しているIT投資分野(n=1329)

 2019年はWindows 7のサポート終了に伴うPCリプレースの波があったが、2020年はその波も落ち着き、IT基盤への投資意欲が高まる。トップ5の並びに大きな変化はないものの、「社内IT基盤(サーバ/ストレージ/ネットワークなど)」が2019年と比較すると7.4ポイントの伸びを見せる。今、企業競争力の強化に向けてデジタルトランスフォーメーション(DX)の動きが活発だが、ITの力で組織を変革するには土台となるIT基盤の整備が欠かせない。企業はDXに向けて本格的に準備を進めようとする動きがこのアンケート結果から見て取れる。

 現時点での企業の関心はIT基盤にあることが分かったが、一方で将来の関心はどこにあるのか。そこで「関心のある分野は」と尋ねたところ、トップ5は回答率の高い順に「AI/機械学習」47.4%、「クラウドIT基盤(IaaS/PaaSなど)」37.0%、「データ活用/分析」34.7%、「社内IT基盤(サーバ/ストレージ/ネットワークなど)」34.5%、「サイバーセキュリティ対策」33.0%という結果となった(図3)。

図3 現在関心のあるIT分野(n=1329)

 2019年の結果と比較してこの並びに大きな変化は見られなかったものの、「AI/機械学習/コグニティブ」に対する回答割合は2019年は40.9%だったが、今回の調査では47.4%と約6.5ポイントの伸びを見せた。一過性のブームと思われていたAI活用が徐々に現実味を帯び、今回のAIに関する調査結果でも回答者の86%がAIは「必要」だと回答した。

重要課題は依然としてコスト削減が1位、しかし割合は減少

 最後に勤務先の企業が重要課題だと位置付けているトピックについて尋ねた。回答率の高い順に、トップ5は「コスト削減」50.9%、「セキュリティの強化」40.3%、「社員間の情報・ナレッジ共有」36.2%、「従業員のワークスタイル変革への対応」34.0%、「IT人材の不足・高齢化」33.6%だった。2019年の同調査の結果では「コスト削減」は54.1%だったが、今回は50.9%と3.2ポイント減少した。その分、他分野の割合が増加した(図4)。

図4 勤務先の重要課題(n=1329)

 2019年12月にIDC Japanが発表した国内企業のDXに関する調査によれば、「日本企業はいまだにコストの効率性などを重視する傾向にある」とのことだった。そこでは、国内企業におけるDXは“内向け”のもので、顧客満足やサービスの改善など“外向き”のDXではないとの指摘があったが、従業員のワークスタイル変革への対応や社員間の情報・ナレッジ共有などが上位に挙がっているということは、まだ内向けのIT活用にすぎず、本質的なIT活用、DXには至っていないということなのだろうか。

 今回の「7つのITトピックス2020」では、セキュリティ対策として「EDR」に注目が集まる現状やAIを必要としながらもまだまだ活用が進んでいないAI活用の実態、AIを扱える人材の不足、業務ツールにクラウドを選択しない企業の実情、ビジネスチャットが組織に定着しない理由などについて触れた。本調査が組織のIT活用戦略を立てる上での一助となれば幸いだ。

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