名刺管理ツールは紙の名刺をデジタル化し、OCRを利用して名刺の情報(名前、企業名、連絡先など)をデータ化する。これらのデータを関連付けて人脈を可視化し、SFAやCRMと連携してマーケティングツールとしても使用される。
名刺管理ツールには大きく分けて3つの形態がある。すなわち、クラウドサービス型、オンプレミス型、パッケージソフトウェア型だ。
クラウドサービス型はライセンスごとにクラウド上のツールを利用し、オンプレミス型は自社サーバにツールを構築し、パッケージソフトウェア型はPCにツールをインストールする。
企業規模に対応する形態として、クラウドサービス型とオンプレミス型はユーザー数が柔軟であり、全社または部署単位での適用が可能だ。しかし、オンプレミス型では自社サーバが必要となる。一方、パッケージソフトウェア型はライセンス数や管理可能な名刺数に制限があるため、大規模な適用には不向きですが、少人数のユーザーには適している。
営業支援機能について、名刺情報をSFAやCRMと連携したいニーズが増えているため、連携機能やAPIの有無が重要だ。オンプレミス型とクラウドサービス型では多くのツールが営業支援システムとの連携に対応しているが、パッケージソフトウェア型では直接連携する機能はほとんどなく、ユーザー自身がデータを抽出して他のアプリに適用する必要がある。
特に、クラウドサービス型の名刺管理ツールの中には、Salesforceと連携して同じアカウントで名刺を管理したり、最新データを同期したり、名刺情報をSalesforceのリードや取引先として登録できるツールも存在する。
名刺管理ツールを選ぶ際に考慮すべき重要な要素として、コミュニケーションのための機能と名刺情報の共有機能が挙げられる。
コミュニケーションのための機能とは、名刺情報を基にシームレスにメールを作成したり、特定の企業についての最新ニュースをピックアップするなど、名刺情報を活用したコミュニケーションを図るための機能だ。
名刺情報の共有機能は、他のユーザーと名刺データを共有し、誰がどの業種の企業と面識が深いかを明示することができる機能。部署ごとに共有するデータを分けたり、役職レベルや勤務形態によって参照できる名刺データを切り分ける機能がある製品もある。
特にクラウドサービス型のツールは、AI技術を用いて出会うべき人物をサジェストしたり、アプリ上でチャット形式のメッセージを送って名刺情報を共有する機能を持つ製品もある。
一方、パッケージソフトウェア型のツールは、共有機能が限られている場合が多く、機密性の高い名刺情報を閉じた環境で管理する必要がある場合には適している。
名刺管理ツールの導入には、初期費用やランニングコストがかかる。パッケージソフトウェア型ではパッケージの購入金額がコストとなり、オンプレミス型ではツールとサーバの導入・運用コストが必要だ。クラウドサービス型では、料金がライセンス数や一定期間内に読み取る名刺の枚数によって変わるため、各企業の利用状況により適したコスト構造が異なる。
名刺管理ツールの選択において最大のチェックポイントはセキュリティだ。クラウド型の名刺管理ツールを提供する事業者の中には、プライバシーマークを取得していたり、従業員が個人情報保護士資格を持っていたりする場合もあるため、そうした要素を1つの指針にするのもよいだろう。
企業によっては、セキュリティポリシーから、自社の扱う名刺データをクラウドに置くことを避けたいというケースもある。その際には、企業規模や使用目的などを差し置いても、パッケージ型やオンプレミス型を選択することも多い。
名刺のデータ化には通常スキャナーやスマートフォンが使用される。名刺管理ツールにはスキャナーが付属しているものもあり、オフィスの既存の複合機を使用できるものもある。
名刺をスキャンする際、一部のツールでは名刺を同じ位置に置いて裏面を再スキャンすることで、両面の情報を一組として登録することが可能だ。これは、表面が日本語、裏面が英語といった名刺が増えている現在、両面の情報を一組として取得したい場合に便利だ。
スマートフォンのカメラを使用して名刺をデータ化する場合でも、一度に複数枚の名刺を撮影しデータ化できる機能があると、読み取りが効率的になる。
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