タレントマネジメントとは、従業員が持っているタレント(資質、才能、スキル)を“見える化”し、人材配置を戦略的に行えるようにする手法。その業務をサポートする「タレントマネジメントシステム」を導入することで効率化できる。
もともとは、米人材開発機構(ATD:Association for Talent Development)が「タレントデベロップメント」という概念を打ち出し、そこから人のタレント(=才能、技能)育成について総合的に体系化された「Integrated Talent Management」が成立した。これが現在まで欧米、とりわけ米国におけるタレントマネジメントのスタンダードとなっている。
日本企業の間ではコンピテンシー評価を人事評価のスタンダードとしていることが多いだろう。コンピテンシー評価に基づいたマネジメントでは、協調性、創造性、柔軟性、交渉力、育成力、法令順守、提案力など、マネジメントに必要な要素を多く並べて、それらが一定水準以上であることを求める傾向になりがちだ。
そうした場合、「プログラミングは抜群だが、人をまとめることが苦手」あるいは「発想力はずばぬけているが、ルーティン業務を確実にこなし続けることが苦手」「技能センスはすごいが、古いタイプの上司に反抗的」といった、一点に突出したタレントを持った人材の評価は低くなってしまう。
しかし現在のグローバル市場では、企業は突出したタレントを有する人材の組み合わせによる、チーム能力の「総面積」で戦わねばならなくなっている。そのため、定型業務を平均以上のレベルでこなすが、突出した人材には乏しいといった、典型的な日本企業の人材構成では、チーム能力の総面積が狭く、世界では通用しなくなりつつある。
つまり、水泳競技に例えれば、4種目を全部泳げる選手で個人メドレーを求めてきたのが日本企業であり、種目別に速い選手を組み合わせてチームメドレーをしているのが欧米型企業ということになる。そして日本企業もチームメドレー型へと変革を迫られた結果、優れた才能をさらに伸ばすことに焦点を置いたタレントマネジメントへの注目度が一気に高まっているわけだ。
人事管理システムの主目的は労務管理や勤怠管理、給与管理等、人事担当者のコア業務を効率化することだ。
タレントマネジメントシステムは資質や才能、スキルなどの社員のタレントを一元管理・可視化するもので、経験や資格、研修受講履歴などのデータも含まれる。社員のタレントを確認することで、経営戦略に沿った人材を迅速にアサインすることが可能になる。つまり「経営戦略に生かすための人材戦略」を目的としたものだといえる。
代表的なタレントマネジメントシステムでは、下記の管理項目を持つ。
前述のように、タレントマネジメントシステムは企業の経営戦略を成功させる目的のツールで、実務の負担を軽減することが主目的ではない。しかしタレントマネジメントの重要性が増すにつれ、人事管理とタレントマネジメント両方の機能を備えたソリューションも登場している。
そもそも、タレントマネジメントシステム導入の前に「優先すべき経営戦略は何か?」「その経営戦略を実施するために必要なのはどのような組織か?」などを定義しておく必要がある。
「最適な人材をアサインする」といっても、人間は単なる駒ではなく、一人ずつ違う内面を持つ。システム上では最適な人材に見えても、経営戦略が整わないまま、またはその説明が従業員にしっかり理解されないままだと、企業と従業員に「ズレ」が生じてしまう。そうすると、従業員のモチベーションを奪ってしまい、最悪の場合その人材を失いかねない。
タレントマネジメントシステムの運用では、人事部に加えて、経営層や各事業の責任者が入力や閲覧を頻繁に行う。導入予定のタレントマネジメントシステムが、UI/UXに優れ、ユーザーにとって直感的で分かりやすいものかどうかも検討項目に入れておくべきだ。
以下はキーマンズネットで掲載している、タレントマネジメントの関連記事だ。サービスの導入、運用にぜひ役立ててほしい。
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