ERP(Enterprise Resource Planning:統合基幹業務システム)は、企業の経営資源を一元に管理し、企業全体の最適化する役割を果たす。単なる業務効率化ツールではなくビジネス変化を的確に捉え、即応するためのデータ分析・活用のベースとなるシステムとしての様相を呈する。クラウドERPは、クラウド環境で利用できるERPを指す。
ERPは、個別業務に最適化された各種業務システムが乱立することで発生するデータの重複や矛盾、入力作業の重複、企業活動全体の状況把握の困難を克服するため、「部分最適から全体最適」を目指すシステムとデータの統合に大きな役割を果たしてきた。
統合による効果は個別業務の効率化にとどまらず、適時の経営指標把握や分析、経営リソースの無駄のない有効活用、経営管理の合理化・効率化、企業全体としての生産性向上にも及ぶ。さらに現在では、単なる業務効率化ツールではなくビジネス変化を的確に捉え、即応するためのデータ分析・活用のベースとなるシステムとしての様相を呈する。
そのシステム形態は、古くはメインフレーム中心のスクラッチ開発に端を発し、70年代にはオープンシステム向けのERPパッケージが誕生、SAPがリードする形でパッケージ導入が進んだ。ERPパッケージには各種業務のベストプラクティスが機能として追加され、製品として洗練されていったが、企業個別の要件を全て反映したわけではなく、特に日本では独特の商習慣に合わない部分もあってアドオン開発で機能を補うのが一般的だった。
その後、国産の業務特化型のERPパッケージが登場したり、汎用的なパッケージが特定業種や業務向けに提供されたりすることで、企業の個別業務に即応可能なものに進化した。なお、アドオン開発の種類や量は減少傾向だが、いまだにその必要性はなくなっていない。
現在は従来のようにパッケージをオンプレミスシステムに導入・構築するケース以外に、プライベートクラウド(IaaS、PaaS)で導入・構築するケース、あるいはパブリッククラウド(SaaS)としてパッケージ機能を利用するケースも増えた。SaaSは基本的に、アドオンのないあるがままのサービスを利用が基本だ。クラウドERPでもそのように利用される一方で、従来と同じように機能のアドオンを望む企業も多い。
ERPにはさまざまな関連テーマがあるが、特に昨今の課題として認識されているのはERPの「2025年問題」だ。
人材の2025年問題は、団塊世代の従業員が一斉に定年退職するために起きる人員不足を指す。同年代にはレガシーシステムの導入に関わった人材や長年基幹システムの保守を担ってきた人材も含まれるため、ブラックボックス化したシステムの保守ノウハウが途切れてしまうリスクが懸念されている。
2025年の崖とは、経済産業省が2018年に公表した「DXレポート〜ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開〜」で指摘した、レガシーシステムの老朽化とブラックボックス化による事業の停滞を指す。同省はこれらを解消するために「2025年までにシステム刷新を集中的に推進する必要がある」と述べ、DXの必要性を強調している。
「2層ERP」(2Tear ERP)とは、ERPシステムを「コア」と「サブ」の2種類に分けて運用する手法を指す。グローバルで多角的な事業を展開する企業においては、本社で大企業向けのコアERPを利用すれば大規模なビジネスを回し、現地の支社や新規事業で安価なサブERPを利用すれば迅速にビジネスを立ち上げられる。
以下はキーマンズネットで掲載している、ERPの関連記事だ。サービスの導入、運用にぜひ役立ててほしい。
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